ISIS(イスラム国)のテロ行為を警察が捜査できるの?刑法の国外犯規定について

ISIS(イスラム国)のテロ行為で先に殺害されたとみられる湯川遥菜さんにつづいて、フリー・ジャーナリストの後藤健二さんも殺害されたとみられる映像が公開されたことを受けて、警察庁は、警視庁と千葉県警に合同捜査本部を立ち上げ、捜査するよう指示したというニュースが流れました。
容疑は、人質による強要行為等の処罰に関する法律(人質強要処罰法)の2条(加重人質強要)違反と、刑法199条(殺人罪)違反です。

ISIS(イスラム国)は外国人のテロ集団ですが、なぜ日本の警察が、日本の刑法にもとづいて捜査することができるのでしょうか?

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国外犯処罰規定とは?

人質強要処罰法は、こう定めています。

(国外犯)
第5条 第1条の罪は刑法(明治40年法律第45号)第3条、第3条の2及び第4条の2の例に、前3条の罪は同法第2条の例に従う。

2条の加重人質強要は、「前3条の罪」にあたるので、刑法2条をみると

第2条 この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯したすべての者に適用する。以下省略

このようになっているので、加重人質強要罪は、日本国外で外国人が日本人に対して起こした犯罪全てに適用される、ということです。

また、刑法3条の2にこんな規定があります。

(国民以外の者の国外犯)
第3条の2 この法律は、日本国外において日本国民に対して次に掲げる罪を犯した日本国民以外の者に適用する。
一 第176条から第179条まで(強制わいせつ、強姦、準強制わいせつ及び準強姦、未遂罪)及び第181条(強制わいせつ等致死傷)の罪
二 第199条(殺人)の罪及びその未遂罪
三 第204条(傷害)及び第205条(傷害致死)の罪
四 第220条(逮捕及び監禁)及び第221条(逮捕等致死傷)の罪
五 第224条から第228条まで(未成年者略取及び誘拐、営利目的等略取及び誘拐、身の代金目的略取等、所在国外移送目的略取及び誘拐、人身売買、被略取者等所在国外移送、被略取者引渡し等、未遂罪)の罪
六 第236条(強盗)及び第238条から第241条まで(事後強盗、昏酔強盗、強盗致死傷、強盗強姦及び同致死)の罪並びにこれらの罪の未遂罪

この中に、殺人罪について規定がおかれています。

したがって、日本国外で、日本国民を殺傷した外国人に対しても、刑法が適用される、ということになります。

これらの犯罪が日本の刑法で処罰対象になる以上、日本の警察が捜査しなければならない、と警察庁は考えているわけです。

実際に捜査できるの?

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とはいえ、実際に捜査できるのかというと、極めて難しいと言わざるを得ません。

報道によると、「捜査本部は約60人体制で、先に殺害されたとされる湯川遥菜さんについても捜査され、2人を殺害したとする映像を分析するとともに、家族や関係者から事情聴取を行い、足取りを調べる」ということになっていますが、日本の警察が外国で捜査することは、権限がない以上できません

その場合はどうするかというと、相手国警察との情報提供や捜査依頼、ICPOを通じた国際捜査共助、犯罪人引き渡し条約の適用、代理処罰などを利用することにより、我が国に犯罪者を引き渡してもらって処罰する、あるいは他国で処罰してもらうということを考えなければいけません。

しかし今回のように、誰もコントロールできないテロ集団が犯罪者ということになると、他国警察はおろか、軍隊でもなかなか対応が難しいわけですから、捜査の実効性は上がらないと思います。

残念ながら、いわゆるお蔵入り事件となってしまう恐れが大きいと考えられます。

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